ラブライブ!スーパースター!!第十二話「Song for All」感想 ~今、動きはじめた僕らの物語~

皆様、こんにちは。
秋が足早に通り過ぎて、もはや冬の足音すら聞こえてきそうな今日この頃ですが、進捗いかがですか。


物語の終わりというものは、いつだって「楽しみな気持ち」と「寂しい気持ち」が入り交じるような、不思議な気持ちにさせてくれるんですよね。

ラブライブ!スーパースター!!第十一話「もう一度、あの場所で」感想 ~信じることが大事だと、自分に言い聞かせたら~ - メガネ(裏)

前回の記事ではこういうことを言っていましたが、TV番組概要欄に「終」の記載がついているのを見ると、やはり寂しい気持ちのほうが勝ってしまう部分はあるんですよね……。
とは言え、物語には必ず終わりがあるのです。そして、わたしたちはそれを見届けなければならないのです。


それでは、本編の詳しい感想をやっていきましょう。
※以下、画像はすべて「TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』第十二話」からの引用です。



いざ、「みんなで叶える」ステージへ

ラブライブ!」東京大会を控え、練習にもより一層熱が入るLiella!。
そこに入ってきたのは、その東京大会の詳細なレギュレーションでした。

シブヤリポーター「今回はリモートでそれぞれの学校ゆかりの場所からの生中継!」

可可は「今回のルールはかなり特殊デス!」と解説していましたが、「無印」二期第三話あたりで似たようなのを見た気がしたりしなかったり。
それはそれとして、ライブ会場選定も大会突破の重要なファクタとなったことで思い悩むLiella!メンバ。「スクールアイドルのライブ」にふさわしい会場探しはなかなか捗らず、かと言って自分たちでステージ設営を行うとなると、練習時間確保についても気になるところ。

そんな中、頼もしい助っ人が現れました。

ヤエ「ステージのことは私たちに任せて、かのんちゃんたちは練習に集中!」

ナナミ・ヤエ・ココノをはじめとする学校のみんなが、ステージ設営に協力してくれることになったのです。


「みんなのために歌いたい」・「音楽でみんなを結びたい」。今まで、そのような想いを胸に歩んできたかのん、そしてLiella!。彼女たちの想いに、学校のみんなも行動を以て応えてくれた。そのようなシーンであると思えてくるんですよね(似たような構図は第八話にもありましたが、あれは「普通科と音楽科の対立関係解消」を描写したというところが強いかなという印象なので……)
やはり、この物語は「ラブライブ!スーパースター!!」であるとともに「ラブライブ!」である。つまり「私を叶える物語」であるとともに「みんなで叶える物語」であるのだということを、強く感じさせてくれます。
第十一話で「かのんの『私を叶える物語』」をフィーチャし、今回で「Liella!の『みんなで叶える物語』」についてフィーチャしようとしているのかなと思わせるところもありますよね。


そして、ついに完成したステージ。
数多の星々が散りばめられ、まさに「みんなで叶える物語」を具現したかのような、Liella!の晴れ舞台。
そのステージのセンターに立つかのんは、高らかに宣言するのです。

かのん「このステージに立って、この景色を見て、私は胸を張って言えます。結ヶ丘の生徒になれてよかったって! この学校が一番だって!」

「みんなのために」というLiellaの「想い」が学校のみんなを動かし、「Liella!のために」という学校のみんなの「想い」がまた、Liella!を動かす。双方向性の「想い」によって、彼女たちはひとつに結ばれるのです。

ひとつになった「想い」を胸に、Liella!は決戦のステージに挑みます。

「先導者」、Sunny Passion

さて、時間軸を少しだけ遡ります。
ライブ会場選定に悩むかのんの前に、ある人物が現れました。

摩央・悠奈「おかえりー」
かのん「ええっ?!」

Sunny Passion、再襲来。
東京大会に向けての買い出しに来たというSunny Passionのふたりに、かのんはかねてより胸の内で燻っていた思いを打ち明けます。

かのん「みんなは『優勝だ!』・『勝ったら全国だ!』とか言うんですけど、私は、歌で勝ったり負けたりってあんまり……」

元々、「歌える場所」を見出したことでスクールアイドルとなったかのん。その後、スクールアイドルとして歩む過程で様々な経験を重ね、第十一話において「歌うことが楽しい」・「歌うことが大好き」という気持ちを完全に取り戻して「あの場所」でのライブを達成した。これによって、彼女の「私を叶える物語」はひとつの到達点を迎えたと言っていいと思うのです。
「歌えないかもしれないという不安があったからこそ、今は歌えるだけで幸せ」と語るかのん。言うなれば「いまが最高!」である彼女にとって、「歌で競い合うこと」については今ひとつピンときておらず、気持ちも追いついていない様子です。


そんなかのんに、Sunny Passionは「『ラブライブ!』で競い合うことによって、スクールアイドルのレベルが格段に向上した」事実を指摘。そして、それと同時にこう告げるのです。

「『ラブライブ!』で歌えば、すぐ気づくはずよ」と。


やはり、こういうのを見ると「Sunny Passionは、かのんたちにとっての『先導者』なんだなあ」と思わせてくれるんですよね。
可可にとってはスクールアイドルへの道を志すこととなった直接的なきっかけであり、かのんや千砂都にとっては先輩スクールアイドルとして、そしてトップランナーとして、スクールアイドルとして歩んでいくうえでの足掛かりをさり気なく示す、そんな存在。
μ'sにとって「超えるべき壁」であったA-RISEや、Aqoursにとって「一番の好敵手」であり続けたSaint Snowとはまた違った「ライバルグループ」像を示してくれたなと思うところがあります。

「敗北」からはじまる物語

時間軸を元に戻しましょう。
東京大会進出をかけたライブが終わり、いよいよ運命の結果発表が訪れます。

結果は二位。
結成して一年にも満たないスクールアイドルグループが残した結果としては、あるいは期待以上・予想以上のものだったのかもしれません。しかし、全国大会に進出出来るのはたった一グループのみ。

Liella!は、「敗北」したのです。


かのんは、このとき気づいたのかもしれません。
「勝利」することは、「想い」を受け取った者の責務であるのだと。
「敗北」してしまえば、受け取った「想い」が無駄になりかねないということを。

しかし、かのんは同時に気づいていたのでしょう。
たとえ「敗北」してしまったとしても、そこですべて終わりになってしまうわけではないということを。
本当の終わりとは、「敗北」に屈して、立ち止まってしまうことなのだと。

数多くの「敗北」を経験し、一度は歌うことをあきらめようとしたかのん。しかし、結ヶ丘に入学した彼女は可可と、そしてスクールアイドルと出会い、「あきらめない気持ち」を受け取りました。そして、自身もスクールアイドルとなって、今日まで歩んできました。
ラブライブ!」東京大会という大舞台に立つことが出来たのも、「あきらめない気持ち」に導かれ、「楽しい」や「大好き」というキラキラした気持ちを胸に刻み、立ち止まることなく歩んできたからなのです。
きっと、かのんはそのことに気づいていたはずだと、わたしは思うのです。

だからこそ、あふれる涙を隠すこともせず、かのんは宣言したのでしょう。

かのん「私、勝ちたい! 勝って、ここにいるみんなを笑顔にしたい! 『やった!』って、みんなで喜びたい!」

歌うことが大好きで。
スクールアイドルが大好きで。
Liella!の仲間たちが大好きで。
そして、結ヶ丘のみんなが大好きで。

それはきっと、そんな気持ちから出てきた心からの叫びだったのだと、わたしは思うのです。

かのん「よーし、いくよー!」

「敗北」からはじまった物語は、「敗北」によっていったん幕を下ろします。しかし、その「敗北」はけして無価値なものではないはずです。

きっとそれは、星明かりに導かれた大いなる序章。
澁谷かのんが、そしてLiella!が紡ぐ「みんなで叶える物語」の新たなる「はじまり」なのです。

こぼれ話

「そこは言うほど本題じゃないので……」的なアレ

かのん「入学希望者が増えた?!」
恋「はい! 今の数ならば、生徒が足りなくなることはないと!」

これといい、結ヶ丘や葉月家の財政事情といい、「(やるかどうかはともかくとして)二期以降に余計な問題は持ち込むものか」という、鋼の意志を感じるのです。
まあ、「雑に解決した!」という気持ちが出てこないのかと言われれば、苦笑混じりで肯定せざるを得ないわけですが……。

「仕込み」はきっちり最後まで

看板に「Oriesta」。例のアレですね(ちょっと文字列が途切れていますが、ほぼ確定ではないかと)


gs.dengeki.com

それはそれとして、「スーパースター!!」作中において、すべてのグループ名候補は仕込まれていなかったように思うんですが、見逃しただけですかね。

「不器用な決意」が唐 可可でやってくる

可可「しかし、今日だけはライバルです。今日だけは、ファンをやめます!」

「敵か味方かの二者択一しかないんかい……?」という心配が出てくる部分もありますが、それはそれ、これはこれ。

ラブライブ!スーパースター!!第八話「結ばれる想い」感想 ~五線譜の上、結び合わせた未来は~ - メガネ(裏)

第八話感想でも触れたところではあるんですが、可可って割と「0か100か」で考える部分がありますよね。「ファン」と「ライバル」って、考え方次第で矛盾せず共存出来る感情とも思えるんですけど……。
まあ、そういう不器用さと紙一重とも言える真っ直ぐさに彼女らしさがあるといえば、その通りなんですけどね。

今回のここ好きポイント

かのん「すみれちゃんはいいよねえ。そういう性格で」
すみれ「どういう意味ぃ?!」

第六話でのやり取りもそうだったんですけど、かのんにとってすみれは一番遠慮なく言い合える存在なんじゃないかなって思うんですよね。もしかしたら、すみれにとっても(可可と同じくらい、あるいはそれ以上に)そうなんじゃないかなって。
こういうふたりの関係性、実はかなり好みなのです。




……さて、終わってしまいましたね。

「サンシャイン!!」劇場版の頃から本格的に「ラブライブ!」シリーズに接することとなったわたしにとっては、はじめて「イチから」見届けてきた「ラブライブ!」である「スーパースター!!」。その「物語」がひとつの区切りを迎えたことに、なんだか感慨深さのようなものを感じるわけなのです。
「頑張る女の子」はいつだって可愛くて、カッコよくて、魅力的で、キラキラしているのだということを「無印」・「サンシャイン!!」・「アニメニジガク」に引き続いて再確認させられましたし、「無印」・「サンシャイン!!」から続く「みんなで叶える物語」と、「スーパースター!!」が掲げる「私を叶える物語」が程よくブレンドされたストーリーには、全体として満足の一言なんですよね。

最後に、大変素晴らしい「物語」を届けて下さったスタッフ・キャストの皆様に感謝を申し上げます。ありがとうございました。


あと、二期も期待してますからね。