ラブライブ!スーパースター!! 二期第十話「渋谷に響く歌」感想 ~なにも見えない夜が来ても~

皆様、こんにちは。
「涼しい」を通り越して「寒い」に片足を突っ込んだような気候になりつつある今日この頃ですが、進捗いかがですか。


思っていたよりも早く追加情報が来たなと思ったところはあります。まあ、この「スクールアイドルミュージカル」をどこまで力を入れて追いかけていくかというのは要検討というところなんですよね。現行の「ラブライブ!」コンテンツを余すことなく追いかけようとすると、身体がいくつあっても足りないような気がするのです。ある意味で贅沢な悲鳴と言ってしまえば、それまでなのですが。

……ところで、「バーチャルスクールアイドル」はどうなったんですかね。こちらについても、そろそろ新情報が来るかなと思っていたところなのですが。

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それでは、本編の詳しい感想をやっていきましょう。
※以下、画像はすべて「TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!! 二期』第十話」からの引用です。



「否定」の暴力、「正しさ」の魔力

ウィーン「歌は力。そして、私は未来を、私自身でビルドする。歌の力で」

かのん「違う、違うよ……。そんなの、本当の歌じゃない」

ついに迎えた「ラブライブ!」東京大会当日。かのんの前に現れたウィーンは、彼女に対して「本当の歌を教えてあげる」と宣言。それを聞いたかのんの口から出たのは、「否定」の言葉でした。
かのんの言葉。そして、その言葉を発する彼女の険しい表情。わたしがそれらから感じたのは、「危うさ」でした。

ウィーン「私が『ラブライブ!』に出場するのは、ここがいかに低レベルであるかをスクールアイドルたちに知ってもらうため」

確かに、「ラブライブ!」東京大会出場者のリモート会見においてウィーンが放った言葉は「ラブライブ!」とスクールアイドルに対する「否定」と言っても過言ではないものであり、それに対する反発や非難が起こることについては容易に想像がつきます(実際に、可可やメイはウィーンの言葉に激しい反発を示していましたしね)。ウィーンが放ったその言葉に対して「否定」したくなる気持ちも、理解出来るところではあります。
しかし、ウィーンがかのんに対して向けた言葉は、いわば「自分『ひとり』の力で『ラブライブ!』を勝ち上がってみせる」という意思表明であるように思えるんですよね。「『みんな』であること」を大切にするかのん、そしてLiella!とは対極的な位置に存在するスタイルと言えるのですが、そうであったとしても、この意思表明に対して「否定」が突きつけられるべきなのかというと素直に頷けないところがあると、わたしには感じられるのです。

かのん「一生懸命頑張って、みんなに応援してもらって、みんなと一緒に成長出来る。スクールアイドルって、本当に素敵だと思う」

「誰かのため」を思い、「誰かのため」に行動し、「誰かのため」に歌うことが出来る。それは、澁谷かのんの持つ美徳。
「みんなのために歌いたい」・「音楽でみんなを結びたい」・「応援してくれるみんなで勝利する喜びを分かち合いたい」。それは、Liella!を動かす行動原理。

それらの価値観は尊ばれるべきものであるのかもしれません。しかし、その価値観が尊ばれるべきものだとしても、それが「正しい」ものであることを保証してはくれません。同時に、それと異なる価値観が「正しくない」ものであるとも限らないのです。
「みんな」であるLiella!と、「ひとり」であるウィーン。両者が対極的な関係性であるというのはすでに述べてきたところではありますが、これは「どちらかが『正しい』」・「どちらかが『正しくない』」という関係性とイコールにはなりません。仮にどちらかが「ラブライブ!」を勝ち進んだとしても、それは価値観の「正しさ」を証明するものではないし、逆もまた然りなのです。

しかし、ウィーンは「ラブライブ!」を「否定」し、「本当の歌」=「正しさ」を見せつけようとしている。そして、かのんはそんなウィーンを「否定」し、「本当の歌」=「正しさ」を示そうとしている。
これはあまりよろしくない展開の予兆であるように、わたしには思えてくるのです。杞憂であればいいのですが……。


そもそも、「本当の歌」はたったひとつでなくてもいいのではないだろうか。わたしは、そのようにも思ってしまうのです。
かのん自身も言っています。「それが私たちにとっての本当の歌なんじゃないかな」と。Liella!には「Liella!にとっての『本当の歌』」があり、ウィーンには「ウィーンにとっての『本当の歌』」がある。もちろん、彼女たち以外のスクールアイドルにとっても「それぞれにとっての『本当の歌』」があり、それらはけして対立することなく共存することが出来るのではないか。そう考えてしまうのは、理想論が過ぎるでしょうか。そのような考えが出てくるのは、わたしが当事者ではないから、第四の壁の向こう側にいるから、あるいは神の目線に立っているからなのでしょうか。


その一方で、かのんがウィーンを「否定」するかのような言動に走ってしまうのも無理からぬことかもしれないという気持ちも、わたしにはあるのです。
「歌で泣いたり笑顔になれたりする素晴らしさ」を信じるかのんにとって、「歌は力」というウィーンの考え方は理解出来ないのでしょう。そして「ラブライブ!」とスクールアイドルに出会ったことにより、過去の「敗北」を乗り越えて再び歌えるようになったかのんにとって、それらを「否定」するかのようなウィーンの言動も到底受け入れられるようなものではない。何より、「『みんな』である」ことを良しとせず、たった「ひとり」で「ラブライブ!」を制覇しようとするウィーンのスタンスが、「『みんな』である」ことを何よりも大切にするかのんにとっては相容れることが出来るものではないのかもしれないのです。

ウィーンが何を思って「ラブライブ!」を「否定」し、自分自身の「正しさ」を見せつけようとするのか。それは我々視聴者にも未だ示されないところですし、ましてやかのんたちが知る由はないでしょう。しかし、かのんが大切にしているものをことごとく「否定」するかのようなウィーンのスタンスが、かのんから無意識のうちに冷静さを奪い、ウィーンを「否定」する言動に陥らせているように、わたしには思えてくるのです。逆鱗に触れるような存在と対峙したときに、かのんが冷静さを失いがちだというところについては、我々はすでに「スーパースター!!」二期第九話で目撃していますからね……。


わたしは、かのんが必ずしも「完璧な」存在であるとも「正しい」存在であるとも思っていません。そして、かのんが必ずしも「正しくあらねばならない」とも考えていません。そもそも、スクールアイドルそれぞれに「本当の歌」があるように、かのんが持つ「正しさ」とわたしが持つ「正しさ」は違うわけですし、彼女が「完璧でない」・「正しくない」・「正しくあろうとしない」(ように思える)からといって、それに渋い顔をするのはお門違いとしたところでしょう。
しかし、「本当の歌」=「正しさ」を求め、ウィーンを「否定」しようとするあまり、かのんは知らず知らずのうちに何か大切なものを見失いかけているのではないだろうか。わたしには、そのように感じられてくるのです。

こぼれ話

Liella!が示す「『イマ』が最高」

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今回の曲タイトル、どこかで聞いたことがある文字列だなと思うわけですが、わたしの気のせいでしょうか。

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もしも過去と未来 どこへだって行けてもきっと
ここにいるよずっと この瞬間君と噛みしめるんだ

『Sing!Shine!Smile!』/作詞:宮嶋淳子/作曲:小幡康裕/編曲:前田 佑弦/編曲:兼松 衆/歌:Liella!

それはそれとして、この歌詞を聴いたとき「『イマ』が最高」のマインドを感じさせられて、ひとりでニコニコしてしまったところはあるんですよね。この歌詞が可可とすみれの歌い出しからはじまるというのも、前回のエピソードを踏まえた文脈を思わせてくれます。

四者四様、協力プレイ

四季「わかりやすく言うと、千砂都先輩がミヤマクワガタだとすると、四季はダンゴムシ……」
千砂都「全然わかりやすくない……」

わたしは昆虫にはてんで詳しくないが、「そこはノコギリクワガタやオオクワガタじゃないんだ……?」という気持ちが出てきたところはある。それらのほうがメジャーであるような気がしないでもないのだが。
それはそれとして、なこちゃんの「ダンゴムシ」エピソードを思い出したそこのキミ、シアターGロッソで僕と握手。

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メイ「私に期待すんなよ? ピアノっつっても、小さい頃から親に言われて習ってるだけだぞ」
恋「この前聴かせていただきました。伸びしろは無限大です!」

一瞬、「物は言いよう」という言葉が脳裏をよぎった。おそらく、恋にそのような意図はない。

きな子「ホントにこんなので思いつくんすか?」
かのん「……ふっ!? 今日、調子悪い……」

作詞をするにあたって「ヨガのポーズ」をしてひらめきを得ようとするかのん。「スーパースター!!」一期でも何度か見受けられたシーンではあるが、そのときの彼女が「調子が良かった」ところを見た試しがない。

可可のなかにも、四季に「謎ゴーグル」のイメージが完全に定着しているのだなという気持ち。さらに言うなら、結ヶ丘の生徒たちや(作中世界における)Liella!ファンの間でも「謎ゴーグル」のイメージが広く知れ渡っている可能性はあるかもしれない。

思い返せば、「サンシャイン!!」二期第八話・第九話でもそうだった

ナマ足をさらしながら行われる彼女たちの練習風景に、「冬の北海道をナメてるのか」という「北から目線」が発動してしまったところはある(きな子や可可は寒さに強いのだろうとは言え……)。この時季の美瑛・中富良野エリアなら、日中の気温もフツーに氷点下になるはずなのだが。

今回のここ好きポイント

幼馴染は下から生える。




ラブライブ!」東京大会における、Liella!とウィーンの激突。その結末は、次回のエピソードまで持ち越されることとなりました。「ベタな手を使ってくれるものよ……!」と、恨めしさすら覚えてしまうわけなのです。
「本当の歌」=「正しさ」を追い求めるかのんとウィーン。ふたりの「物語」が、いかなる道へと繋がっていくのか。ふたつの「物語」は、いかにして交わっていくのか。固唾を飲んで見守るしか出来ないのが、なかなかもどかしいところ。

ラブライブ!スーパースター!!」二期のストーリーも、残すところあと二話。
これからの展開や、いかに。