にじよん あにめーしょん 総感想 ~そして、また一歩~

皆様、こんにちは。
吹きゆく風に含まれる春の香りが、その足音とともにどんどん強くなっていく今日この頃ですが、進捗いかがですか。


「伊達さゆりの 伊達にラジオやってません!!!」とあわせて、Liella!一般公募組が全員「A&G」で番組を持つことになるというのは(ラジオどっとあいがワンクール番組であるとは言え)スゴい話だなと思うところがあります。どこまで狙ってやっているんだろうか。


それはそれとして、「にじよん あにめーしょん」が全話放映されましたね。元々はアニメ化の予定すらなかった「ニジガク」。それがスピンオフ作品のアニメ化にまで至ったというのは、感慨深さが出てくるところもあります。

それでは、詳しい感想をやっていきましょう。


そして、それは新たな一歩

www.youtube.com


「言うほど、ミヤコヒト先生の画風を再現出来ていないな……」というのが、わたしの第一印象としてありました。
ほぼ全編にわたって3Dモデルによる作画がされていた「にじよん あにめーしょん」。昨今のモデリング技術の向上には目を見張るものがあれど、手書き作画と比較したときにその違いが見え隠れするのも致し方なしとしたところでしょう。上記ツイートでも言及したとおり「にじよん シーズン3」・「にじよん シーズン4」はミヤコヒト先生の作画がそのまま使われていたというのも、その印象に拍車をかける要因だったと言えるかもしれません。

しかし、視点を変えればこんなことも言えるのではないでしょうか。
「『ほぼ全編にわたって3Dモデルを活用した』ことにこそ、意義がある」と。

今までの「ラブライブ!」シリーズにおいて、3Dモデルが活用されていたのはほとんどライブシーンに限られており、日常シーンは手書き作画というのがデフォルトでした。その一方で、「にじよん あにめーしょん」では前述した通りほぼ全編にわたって3Dモデルが活用されています。
もちろん、手書き作画よりも3Dモデル活用のほうが優れた表現であるなどというつもりはありませんし、五分枠アニメだからこそ可能な「挑戦」だったのかもしれません。そして、この「挑戦」が今後のアニメ展開に活かされる可能性も、もしかしたら存在しないのかもしれません。しかしながら、この「挑戦」によって「本編での3Dモデル活用も十二分に可能である」と示せたのは、大きな一歩だと思うのです。


また、「『ラブライブ!』シリーズでありながら『スクールアイドル』をメインとして扱わない日常もののストーリー」であるというのも地味ながら大切な一歩だと感じるところがあるのです。
実際、今回のストーリーは半数以上が彼女たちが「スクールアイドル」でなくとも成立する物語なんですよね。このような物語をアニメ化出来たというのは、「ラブライブ!」シリーズとしてより大きな展開が出来る可能性が広がったと言えると、わたしは思うのです。
そして、「日常もの」であったからこそ「スクールアイドル」でない侑が楽曲に参加出来たと言えるというところもあるんですよね。これもまた、「広がった可能性」のひとつなのではないでしょうか。


そして、それは変わらぬ一歩

ラブライブ!」シリーズとしての目新しさを感じる一方で、今までと変わらない「ニジガク」らしさも感じられたのも「にじよん あにめーしょん」だったなと思うところがあります。

歩夢「ん? どうしたの、侑ちゃん?」
侑「ううん、ちょっと思っただけ。はじめて、良かったって!」
(「にじよん あにめーしょん」第十二話より)

ミア「エマの歌を聞いてると、思い出すよ。人気とか再生数なんかじゃなくて、僕は歌そのものが、大好きなんだなー、って」
(「にじよん あにめーしょん」第五話より)

侑「あっ、ホワイトボードとか?」
(「にじよん あにめーしょん」第一話より)

「アニメニジガク」本編や「にじよん」本編を思い起こさせるかのようなシーンやセリフはもちろんのこと、

愛「ちゅっちゅっ、ちゅききゅき、らぶらぶりん!」
(「にじよん あにめーしょん」第二話より)

侑「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!」
(「にじよん あにめーしょん」第一話より)

リアルでのライブや生放送で行われた一幕、

(「にじよん あにめーしょん」第十話より)

ファミ通四コマ」・「スクフェス分室四コマ」を思わせる小道具、

(「にじよん あにめーしょん」第四話より)

(「にじよん あにめーしょん」第十二話より)

挙句の果てにはライブグッズやCDジャケットに至るまで(このあたりになってくると、言われるまで気づけなかった……!)、多種多様な媒体から「引用」が行われています。

「アニメニジガク」でもお馴染みであったこの「引用」、単なる小ネタ散りばめという意味合いだけではなく、「今まで必死に生きてきた瞬間瞬間は、けしてなかったことにしない」というメッセージ性を個人的に感じているのですが、この「引用」が今作でも継続されているというところに強烈なこだわりと一貫性を思わせるところがあるんですよね。



各話のここ好きポイント

第一話「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

歩夢「えっと……、普通に困ってます……」
(「にじよん あにめーしょん」第一話より)

上原 歩夢、意外と言葉を選ばないタイプである。

栞子「あのー……、それでこの動画の趣旨は何なのでしょう? このままだと収拾がつかなくなりそうですが……」
(「にじよん あにめーしょん」第一話より)

「しゅうしゅう」がつかなくなる。「しゅし」だけに。

第二話「ランジュと愛と可愛い」

(「にじよん あにめーしょん」第二話より)

(「にじよん あにめーしょん」第二話より)

「逆作画崩壊」による3Dモデル作画とのギャップで可愛さをアピールする演出、素直に膝を打ったところはあります。

エマ「三恒河沙!」
(「にじよん あにめーしょん」第二話より)

エマ「八阿僧祇!」
(「にじよん あにめーしょん」第二話より)

エマ「百那由多ー!」
(「にじよん あにめーしょん」第二話より)

「覚えたてのクソデカ単位を使いたいんだろうな」と考えると、草が生えるし花も咲く。

第三話「ミアと歩夢とホラー」

エマ「ひいい、こわいよ、ランジュちゃーん……」
(「にじよん あにめーしょん」第三話より)

エマがホラー苦手だというのは、ちょっと意外。

第四話「果林と栞子と将来」

(「にじよん あにめーしょん」第四話より)

久保田 未夢さんの「やんちゃで活発な子」演技、なかなか新鮮さを感じるところがあります。

果林「まあ結局、都会で暮らすかっこいいお姉さんに憧れたっていうだけの話なんだけどね。それで島を飛び出しちゃったってわけ」
栞子「都会で暮らすかっこいいお姉さん……。ではその夢は、きちんと叶えたんですね。素晴らしいです!」
(「にじよん あにめーしょん」第四話より)

果林は自身のことを「かっこいいお姉さん」として道半ばと思っていたけど、後輩たちはもうすでに彼女のことを「かっこいいお姉さん」だと思ってくれている。「アニメニジガク」二期第三話における「自分自身のことって案外わからないよね」・「他者との関わりのなかで『自分らしさ』を見出すこともあるよね」という考え方に通ずるところを感じさせます。

「自分」とは、自分自身にとって最も身近な存在。「灯台もと暗し」という言葉もある通り、身近であるがゆえに気づけないことは、案外たくさんあるんですよね。

しかし、「自分」はひとりきりだとしても「自分たち」であればひとりきりではない。自分以外の存在、つまり「みんな」との関わりによって、わたしたちは自分ひとりでは気づくことが出来なかった「自分らしさ」を見出すことが出来るのです。

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 二期第三話「sing!song!smile!」感想 ~ピース&ピース合わせゆこう、輝けマスターピース~ - メガネ(裏)

第五話「エマとミアと歌」


(「にじよん あにめーしょん」第五話より)

この直後の流れから考えると、「もしかすると、みんなで『わちゅごなどぅー』を歌っているのかもしれない……」という気持ちが出てくるところがある。そして、じわじわくる。

第六話「璃奈ちゃんRunRuns」

璃奈「三人にも、テストプレイしてほしい」
(「にじよん あにめーしょん」第六話より)

璃奈の手の動きから伝わってくる、彼女のうずうず・わくわく感。手は口ほどに物を言う。

第七話「ランジュとジョーカー」

ランジュ「見なさい、このカードさばき!」
彼方・しずく・エマ「すごーい!」
(「にじよん あにめーしょん」第七話より)

まあ、ショット・ガン・シャッフルはショット・ガン・シャッフルではないというのはよく言われるところではありますが。

ミア「ランジュ……!」
(「にじよん あにめーしょん」第七話より)

(「にじよん あにめーしょん」第七話より)

「アニメニジガク」二期序盤においては「僕とランジュは友達じゃない」と言っていたミア。それが今では彼女の心情を慮ってフォローを入れようとし、彼女がひとりぼっちでないと知って自分のことのように喜び、笑みをこぼすまでに関係性が変化したと考えると、感慨深さが出てくるところがあります。

第八話「彼方としずくと妹」

(「にじよん あにめーしょん」第八話より)

彼方ちゃんはいつでも全力です。

(「にじよん あにめーしょん」第八話より)

(「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 二期」第二話より)

第八話に限った話ではないのですが、「にじよん あにめーしょん」の彼方はデフォルト表情が概ね「簀巻き」顔であるというのが、なかなかツボに入ってくるところがあります。

第九話「妹王決定戦」

侑「はーっ! かすみちゃん、可愛いー!」
(「にじよん あにめーしょん」第九話より)



侑「わかる。栞子ちゃん、欲しい」
(「にじよん あにめーしょん」第九話より)



侑「わかる。ミアちゃん、欲しい」
(「にじよん あにめーしょん」第九話より)



璃奈「侑お姉ちゃん……」
侑「可愛い……! 可愛すぎてトキメイチャウヨー!」
(「にじよん あにめーしょん」第九話より)



璃奈「ミアお姉ちゃん……」
ミア「フヒヒ……」
(「にじよん あにめーしょん」第九話より)



第十話「かすみとせつ菜とドッキリ」

かすみ「スクールアイドルとしていつも完璧なせつ菜先輩ですが、ライブがはじまったとき、いつもと違う状況だったらどう反応するのか、検証してみたいと思います!」
(「にじよん あにめーしょん」第十話より)

かすみ「そして……、驚いたり慌てたりするせつ菜先輩をカメラに収めちゃいますよ!」
(「にじよん あにめーしょん」第十話より)

実家のような安心感。
「アニメニジガク」以降だと、なかなか「しょーもないイタズラでライバルを陥れようとするかすみ」を観られなかったので、「そうそう、これが観たかったんだよ!」という気持ちが出てくるところはあるんですよね(腹黒系スクールアイドルだったころのお前はもっと輝いていたぞ!)。まあ、靴にコッペパン仕込むのに比べればかなり可愛いものではありますが。

(「にじよん あにめーしょん」第十話より)

なんやかんや言いながら、かすみのドッキリ計画がバレないように付き合ってあげる優しい先輩たち。

(「にじよん あにめーしょん」第十話より)

そして、せつ菜は(想像の中でも)ペカペカしている。

第十一話「侑と幼馴染」

侑「(それに最近は、正面からよりも横顔を見ることが増えたなって。それが嬉しいんだ!)」
(「にじよん あにめーしょん」第十一話より)

歩夢と侑の関係性が「同じ場所に立ってお互いを見つめ合う関係」から「違う場所に立っていても同じ場所に向かっていける関係」になっていく物語が「アニメニジガク」一期だとするなら、そこからさらに「違う場所を目指すとしても心は繋がり合っている関係」へとアップデートされていく物語が「アニメニジガク」二期なのかもしれない。

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 二期第十二話「エール!」感想 ~心は、きっと繋がっているから~ - メガネ(裏)

「同じ場所に立ってお互いを見つめ合」っていたり「同じ場所に向かってい」くような関係のままだったら、距離が近すぎて、きちんと見ることが出来なかったであろう横顔。
ふたりの関係性の変化と成長が垣間見えるセリフだと感じられるところです。

第十二話「ピアノとスクールアイドル」

せつ菜「もおー! なんてこと言うんですかー! 私の大好きが溢れちゃいますよー!」
(「にじよん あにめーしょん」第十二話より)

シリアスに徹しきれない「大好き」の暴走特急。それが優木せつ菜。




元々、「ニジガク」の入門編としてのポテンシャルは十二分に秘めていた「にじよん」。「にじよん あにめーしょん」は、その「にじよん」が持っていたふいんき(なぜか変換出来ない)をそのままに、肩の力を抜きながら観ることが出来る良作だと感じられました。
今夏には「幻日のヨハネ」のアニメ放送も待っていることですし、これらスピンオフ作品の映像化が「ラブライブ!」シリーズの展開をさらに広げてくれることに期待したいところです。

そして、「日常もの」スピンオフ・「ファンタジーもの」スピンオフとくれば、次にやるべきなのは「巨大人型ロボットを主軸にしたSFもの」スピンオフだと思うのですが、そこのところどうですかね、サンライズさん。