幻日のヨハネ 第十話「いってらっしゃいヨハネちゃん!」感想 ~「自分」と「みんな」の狭間で~

皆様、こんにちは。
ほんの少し前までは「暑い」・「熱い」・「アツい」を連呼していたのに、ここ最近はすっかり涼しくなったように思えてならない今日この頃ですが、進捗いかがですか。あるいは、今までがあまりに暑すぎたせいで感覚が麻痺してしまったのか。


ウソでしょ。


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それはそれとして、さすがにもう「澁谷かのん!」呼ばわりではないんですね。安心したような、残念なような。


それでは、本編の詳しい感想をやっていきましょう。
※以下、画像はすべて「TVアニメ『幻日のヨハネ』第十話」からの引用です。



ちぐはぐなホームワーク、あるいは「自分」と「みんな」の二項対立性について

燃え尽き症候群、もとい充電期間を終わらせたいと考えながらも、あと一歩のところで踏ん切りがつかないヨハネ。そんな彼女のもとに、ある報せが舞い込みます。それは、トカイで行われるオーディションの案内でした。

ヨハネ「私にしか出来ない、楽しくてたまらないこと……。夏祭りでみんなと一緒に歌ったけど、でもそれは、自分のためだったのかっていうと……」

ヨハネ「私のことを応援してくれてるひとたちがいて、そのひとたちの気持ちに応えたい!」

ヨハネ「私がもう一度トカイに行って、一人前にならなきゃいけないと思えたのは、支えてくれたひとたちのおかげです」


「そこはかとなく、『ちぐはぐ』さを感じるなあ……」というのが、思うところとしてあるんですよね。

ヨハネが母親から課された「ヨハネにしか出来ない、楽しくてたまらないことを見つける」という「宿題」。今回のエピソード冒頭でも回想されていた第九話でのヨハネのセリフ、特に「『自分』のため」というワードから考えるに、彼女は「やりたいと思う気持ちこそが一番大事」という(「ラブライブ!」シリーズの根幹のひとつでもある)精神性に、そのヒントを見出しているように思えます。
しかし、トカイでのオーディションに挑戦する意志を固めたヨハネから出てくる言葉は「応援してくれてるひとたち」・「支えてくれたひとたち」。行動のモチベーションが「自分」ではなくて「みんな」なんですよね。

「『自分』のため」と、「『みんな』のため」。
このふたつのファクタが、どうにも上手く噛み合っていない。つまり、「ちぐはぐ」であるように、わたしには感じられてしまうのです。


もちろん、「『みんな』のために頑張ること」が出来るのは素晴らしいことです。これまでのストーリーにおいて、街のひとたちと「縁」を結び、仲間たちとの「絆」を繋いできたヨハネ。街のひとたちや仲間たちに助けられ、ひととひととの「繋がり」の素晴らしさを実感しながら成長してきた彼女が「今度は、私が『みんな』のために」と考えるのは何ら不思議なことではないと、わたしには思えます。「『みんな』のために頑張る」というのは、(「やりたいと思う気持ちこそが一番大事」という精神性と同じように)今までの「ラブライブ!」シリーズでも数多く取り上げられてきた図式でもありますしね。
あるいは、「『自分』のため」と「『みんな』のため」は、必ずしも対立する概念ではないのかもしれません。「『みんな』のために頑張ることが『自分』がやりたいことなんだ」というのも、けして不自然な考え方ではないはずですから。
「『みんな』のために頑張りたい」・「『みんな』の期待に応えたい」というのはヨハネの本心から出た言葉なのだと、わたしは信じています。しかし、彼女が「『みんな』のために頑張ることが、『自分』がやりたいことなんだ」と思えているとは、どうしても信じきれないというのも、また事実としてあるのです。「『みんな』のために頑張ること」・「『みんな』の期待に応えること」を「『みんな』のために頑張らなければならない」・「『みんな』の期待に応えなければならない」という「義務」や「責務」として捉えてしまっているような、そんな雰囲気を感じてしまいます。


わたしが感じたこの「ちぐはぐ」さが、勘違いである可能性は否定出来ません。むしろ、勘違いであってほしいところでもあります。しかし、一度感じてしまった「ちぐはぐ」さは、そう簡単に拭いきれるものではないんですよね……。

はたしてヨハネは、「宿題」にどのような答えを出すのでしょうか。

こぼれ話

冷たさの裏にあるものは

ライラプス「私は行かない。トカイにも、パーティにも」

「一緒にトカイに行かないか」と誘うヨハネを冷たく突き放すライラプス。「誰にも甘えず一人前になる」と宣言したそばから「でもやっぱり、ひとりは心細いな……」などと宣うヨハネに、「どの口がほざくか!」と思いたくなる気持ちも理解はしますが、それだけでは「パーティにも出ない」とまで言う理由としてはちょっと弱いような……。
パーティでの挨拶でヨハネが語ったように「ヨハネを半人前にしないために、あえて突き放すような言動をとった」というのが、ライラプスの心情として考えられるところではあります。しかし、ここでヨハネのセリフとしてしっかり提示してしまっているあたりに、どこかミスリードめいたものを感じずにはいられないんですよね。この際、「ライラプスはヌマヅの土地神であり、それゆえにヌマヅから離れることが出来ない」みたいな展開があっても驚かない(これはこれで、「パーティにも出ない」とまで言わせる理由にはなりませんが……)

クソ田舎だから他の娯楽がないのかしら

ダイヤ「お呼びだてして申し訳ありません。ある噂を耳にしたもので……」
ヨハネ「噂?」
ダイヤ「ヨハネさんがヌマヅ代表の歌手として、再びトカイに行くという噂です!」
ヨハネ「ええっ、トカイには行きますけど、別にヌマヅを代表して行くわけでは……」
ルビィ「で、トカイのでっかいところでライブして、キャーキャー言われるんだよね!」
ヨハネ「なんか、だいぶ尾鰭がついてる……」

「噂が噂を呼び、想像以上の大騒動に発展」な展開を、第九話に続いてテンドンしてくるなんて思いもしないじゃないですか……。あまりの尾鰭のつきっぷりに「もしかして、これもヨハネがヌマヅを飛び出した原因のひとつなのでは……?」と邪推してしまうところもあるのです。

ダイヤ「そこで、ヨハネさんをトカイに送り出すための一大イベントを開きたいと思います! 題して、『ヨハネさんいってらっしゃいパーティ』!」
ヨハネ「『いってらっしゃいパーティ』?!」

そして、ヨハネに確認を取ることなく不確かな噂だけで企画を進めてしまうダイヤたちには「ちょっと落ち着け」と言いたくてたまらなくなる。だってもう、見て下さいよ。このライラプスの呆れ顔。
ダイヤひとりで権力の濫用をやらかしたというよりは、行政局が一丸となって暴走してしまったというのが実情なのではないだろうかと思うところはあるのですが、それはそれとして「ちょっと落ち着け」なんですよね。ヨハネが「オーディションは三日後」と言っていたことから、この企画が一日足らずで立案・実行されたであろうことも察せられ、それがさらに「ちょっと落ち着け」感を加速させます。まあ、そのようなツッコミを織り込んだ上でのギャグ的演出として意図されているのであろうというのは、容易に想像がつくところではありますが。

今回のここ好きポイント

ヨハネ「オーディション、前のときはダメダメだったから……。今度こそ失敗したくないなって……」

トカイでのオーディションという大きすぎるチャンスを目の前にして、ヨハネの胸中によぎる不安や恐れ。しかし、仲間たちから与えられた気付きによってその不安や恐れは払拭され、彼女は一歩を踏み出すための決心を固めるのです。
このヨハネの心情を「太陽と雲」にリンクさせる演出には、ベタながらベターといった趣(おもむき)を感じるんですよね。

今回のここ好きポイント その2

ルビィ「皆さん、お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません!」

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ここまでやるなら、「えいえいおー!」もどうにかしてねじ込んでほしかったというのが、気持ちとしてあります。



「天災は忘れた頃にやってくる」と言わんばかりに襲いかかる「異変」。これまでにない規模でヌマヅ全域を飲み込んだ「異変」は、ヨハネたちにも容赦なくその牙を向くのです。

ストーリーもラストスパートを迎えようとするなかで、事態は大きく急転直下。
さあ、どうなる次回。