幻日のヨハネ 第八話「届け! Sea breeze」感想 ~成長の裏に潜む「弱さ」と「脆さ」~

皆様、こんにちは。
お盆休みが終わっても台風の暴挙は終わってくれない今日この頃ですが、進捗いかがですか。


「簀巻き」がここまで擦られることになるとは思っていなかったという気持ちがあります。「アニメニジガク」一期第七話・二期第二話にて「簀巻き」彼方ちゃんに全部持ってかれたあの頃も遠くなりにけり。


それでは、本編の詳しい感想をやっていきましょう。
※以下、画像はすべて「TVアニメ『幻日のヨハネ』第八話」からの引用です。



「弱さ」・「脆さ」が導く未来予想図

いよいよはじまった夏祭り。ライラプス曰く「前までは羨ましそうに眺めてただけだった」ヨハネも、仲間たちと一緒に夏祭りを満喫します。しかし、ふとした拍子に大事な魔法の杖を紛失してしまい……。

ヨハネ「私は、最高の舞台でみんなと歌いたいの。それには、あの杖がないと……」

ヨハネ「そばにいたのに! 杖失くしたとき、一緒にいたんだから気づいてくれても良かったじゃん!」


これまでのストーリーにおいて「縁」を結び、「絆」を繋ぎ、確かな成長を見せてきたヨハネ。今回のエピソードでは、そんな彼女の心に未だ潜む「弱さ」と「脆さ」が垣間見えたように、わたしには感じられます。

杖を紛失したことに気づいたヨハネの動揺は、これまでのストーリーにおいても全くと言っていいほど見られなかったものでした。ライラプスは「もし杖が見つからなくても、ヨハネは歌えると思う」と励ましていましたが、「とてもじゃないけど、それは疑わしいなあ……」と渋い顔が出てきてしまうほどに。
ヨハネ自身も「今まで歌うとき、必ずあの杖があったの」と語り、歌うとき以外でも肌身離さず持ち歩いていた魔法の杖。その魔法の杖(あるいは、それがもたらす魔法)に、これほどまでにヨハネが依存していたという事実には驚きが出てくるところがあるんですよね。

また、この直後のシーンにおいてヨハネライラプスに対してブチかました理不尽な暴言についても、ヨハネライラプスに対して抱いている「甘え」の裏返しであるように、わたしには感じられてきます。
幼い頃から常に一緒で、気心が知れた仲であるヨハネライラプス。素直になりきれない言葉の裏に秘められたヨハネの気持ちを的確に慮り、優しい眼差しで彼女を見守ってくれる、ヨハネにとっては姉妹のように近しい存在。その関係性にヨハネは少なからず「甘え」を抱いていたのだと、わたしには思えてくるのです。そして、「大事な魔法の杖を紛失した」という精神的な極限状態においては、その関係性が最悪な形で作用してしまったのではないでしょうか。


そして、今回のエピソードにおいてヨハネが見せた「弱さ」・「脆さ」からは、新たな不安要素を感じてしまうところもあるのです。

もし、ヨハネが魔法そのものを失うことになったとしたら。
もし、ヨハネライラプスと別れることになったとしたら。

特に後者についてはOP映像で示唆されていることもあり、かなり確度の高い未来予想図であるように思えます。また、今回のエピソードで(ほんのわずかな時間であったとは言え)魔法の杖を失くす展開をお出ししてきたということは、今後のストーリーにおいてヨハネが魔法そのものを失う可能性もゼロではなく、むしろその前フリとして今回のエピソードが用意されたかのようにも感じられてくるのです。


懸念事項はもうひとつ。
「物語」があまりにもトントン拍子で進みすぎている。わたしには、そのように思えてならないのです。
確かに、第三話における「異変」に囚われたシカとの対峙や、今回のエピソードにおける魔法の杖紛失事件など、これまでのストーリーにおいてもトラブルはいくつか発生しています。しかしながら、いずれのトラブルもエピソードを大きく跨ぐことなく解決しており、「ヨハネが仲間たちとの『縁』を結び、『絆』を繋ぐ」・「ヌマヅを襲う『異変』と対峙し、ヨハネの歌にその対抗策を見出す」・「ヨハネの歌の力を発揮させるために夏祭りのステージでライブを行い、そのライブは成功を収める」といったストーリー全体の流れには不自然に思えるほどのスムーズさを感じずにはいられないのです。「嵐の前の静けさ」ではありませんが、このスムーズさがこれまでにない特大級トラブルの前触れに思えてならないのは、そして、その特大級トラブルが「魔法の喪失」や「ライラプスとの別れ」であるように思えてならないのは、わたしの考え過ぎでしょうか。


魔法とライラプスヨハネにとっては、どちらも失いたくない大切なものであるはずです。
その大切なものを失う未来が来てしまうのだとしたら、彼女は一体どうなってしまうのでしょうか。

こぼれ話

適切に助けを求めることが出来るのも、ひとつの能力なのです

リコ「そういうことなら」
マリ「私たちも手伝うよ」
ヨハネ「ふたりとも……!」

リュウ・セツ・ラン「たーこがいっぱい、おなかもいっぱい、ゆめいーっぱい!」

第七話においては見栄を張るあまり誰の手も借りずにひとりで女子会幹事を遂行しようとしていたヨハネが、リコやマリ、リュウゼツラントリオの手助けを素直に受け入れている光景には、感慨深さが出てきます。「大丈夫じゃなーい!」と弱音を吐いたり、カッコ悪いところを見せられるようになったのもひとつの成長ですし、それだけ仲間たちと打ち解けることが出来たということでもあるのです。
さらに言うなら、彼女たちがヨハネを快く手助けしてくれるのは「縁」や「絆」の賜物だと感じさせてくれるところもあるんですよね。

隣は何を知る犬ぞ

ライラプス「ねえ、ヨハネ。もし杖が見つからなくても、ヨハネは歌えると思う。だって、ヨハネの力は……」

ライラプスヨハネ、あの杖には……」

ヨハネの魔法について何か知っているがゆえの言葉」であるようにも聞こえるし、「ヨハネを励ますための方便」にも思えてくる。ヨハネの言葉に遮られて最後まで聞き取れないがために余計に判別不可能であるというのもベタながらベターな演出といった趣(おもむき)があり、ある種の忌々しさすら感じさせるところもあるんですよね。
以前より意味深な言動はちらほら見えているし、なんでヨハネとコミュニケーションを取れるのかも明らかになっていないし、動物学者のリコですら「あんな動物見たことない!」と言っているし……。
ホントに何なんだ、あのでけえ犬は。

正直な話をすると、ただのモブキャラだとは思わなかった

「他のモブキャラではめったに見られない銀髪・白髪」+「夏祭り装束の非着用」=「妙な存在感を発揮するモブキャラ」。
ラブライブ!」シリーズ全体で見ても、ここまで存在感があるモブキャラはなかなかいないように思える。

今回のここ好きポイント

リコ「もしかして、トンビが巣を作るために持っていったんじゃあ……」

結果として「当たらずと言えども遠からず」な絵面であったことについては、「嘘でしょ?!」という気持ちが出てこないでもない。




夏祭りでのライブが大盛況のうちに終わりながらも、今後のストーリー展開に対する不穏さを感じずにはいられない今回のエピソード。

その上で、次にお出しされるエピソードタイトルがこれなんですよ。「もしかして、ライラプスとの別れがこんなにも早く……?」という気持ちと「言うて、ストーリーも後半戦に差し掛かったばかりだし、いなくなるにはちょっと早すぎやしないか……?」・「『ライラプスをさがせ』だし、一時的にいなくなるだけでしょ……?」という気持ちがせめぎあってしまうんですよね。

次回や、いかに。