幻日のヨハネ 第十一話「ヨハネのまほう」感想 ~「輝き」の功罪~

皆様、こんにちは。
日中はともかく、朝晩が急激に涼しくなったように思えてならない今日この頃ですが、進捗いかがですか。


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「アニゲー☆イレブン!」放送日である金曜日といえば「前田佳織里の進め!前田号」も放送されていることだし、かおりん大活躍じゃん。


それでは、本編の詳しい感想をやっていきましょう。
※以下、画像は注記がない限り「TVアニメ『幻日のヨハネ』第十一話」からの引用です。



なにも知らないほうが幸せというけど

ヨハネの門出を祝うパーティの最中、突然襲いかかる「異変」。これまでにない勢いで街を飲み込む「異変」を目の前にして、ヨハネは自分自身の無力さを痛感し、心を閉ざしてしまいます。そんなヨハネを心配する仲間たちは、どうにかして彼女に元気を取り戻してもらうべく奮闘するのですが……。

ヨハネ「気づけて良かった……。私には、なんとか出来る力があるなんて自惚れて……」
ライラプス「っ……! 『異変』はヨハネのせいじゃない……!」
ヨハネ「みんなのためになれるって……、みんなの……。私は……、何も出来ない……!」

ヨハネ「みんなに会いたくないのは、合わせる顔がないから」
ライラプス「パーティの中止は仕方なかったことだよ」
ヨハネ「仕方なくないよ」
ライラプス「でも……」
ヨハネ「私に何もなかったせいで、街がこんなことになったんだ……」

ヨハネ「でも、私にはみんなの優しさを受け取る資格なんてない……。『異変』が起こらないように出来たんだって、ヌマヅはもう大丈夫なんだって、そう思ってた……。でも、こんなことになって、みんなと違って、私には何もなかったんだって気づいたんだ……」

「成長」することが、常に良いことばかりというわけでもないのだなと思ったところがあります。

かつて「歌手になる」・「トカイでビッグになる」という夢に破れ、不本意な帰郷を果たしたヨハネ。そんな彼女がヌマヅで出会ったのは、それぞれに「やりたいこと」や「楽しいこと」、「大好きなこと」を見つけて日々を頑張る仲間たち。そんな彼女たちとの出会いは、ヨハネに「前向きな気持ち」を、そして「成長」をもたらします。「こんな何もない街のことなんてどうでもいい」・「こんな小さな街のことなんて私には関係ない」と嘯きながら自分の殻に閉じこもっていた彼女が、周りに目を向けて「誰かのために」・「街のために」・「みんなのために」と起ち上がることが出来るようになるほどの「成長」を。

しかしながら、「成長」によって周りがよく視えるようになったヨハネだからこそ、自らの「歌」と「魔法」の力で「異変」を解決することが出来なかったという事実に、より一層の精神的打撃を受けたのではないでしょうか。
自分には「異変」を解決するための「歌」と「魔法」の力があったはずなのに。それがまやかしであったとしたら、自分にはもう「何もない」ではないか。それぞれの場所で頑張って「輝いている」みんなと違って、自分には「何もない」!
ヨハネにとってその精神的打撃は、かつて「何もない街」の向こう側に「何もない自分」を幻視し、ヌマヅを飛び出したあのときを遥かに上回るものだったのではないでしょうか。「やりたいこと」や「楽しいこと」、「大好きなこと」を見つけて日々を頑張っている仲間たちという存在を知ってしまった、今の彼女にとっては。そんな仲間たちと「何もない自分」との隔たりを実感してしまった、今の彼女にとっては。わたしには、そのように感じられてしまうのです。そのような存在を知ることのなかった二年前のヨハネですら「何もない自分」に耐えきれずにヌマヅを飛び出してしまったのですから、今のヨハネに襲いかかる無力感は、わたしの想像をはるかに超えるものであるように思えてなりません。

もしかしたら、彼女は「何もない街」の向こう側に「何もない自分」を幻視したのかもしれない。自分にしか出来ない楽しくてたまらないことも本気で叶えたいと思える夢も見つからず、平凡で何も起こらない日々を過ごす。そのようなつまらない(しかし、もしかしたらありえるかもしれない)未来図に、彼女は恐怖したのかもしれない。わたしには、このように感じられてくるのです。

幻日のヨハネ 第一話「はじまりのうた」感想 ~そしてまた、僕らは「先導者」と出会う~ - メガネ(裏)


さらに言うなら、「『何もない』自分には、何もすることが出来なかった」という(少なくとも、ヨハネにとっての)事実が、「みんなの期待に応えなくてはならない」と考えてしまっているヨハネには、より一層クリティカルな精神的打撃になってしまったのだと、わたしには感じられてしまうのです。

「『みんな』のために頑張ること」・「『みんな』の期待に応えること」を「『みんな』のために頑張らなければならない」・「『みんな』の期待に応えなければならない」という「義務」や「責務」として捉えてしまっているような、そんな雰囲気を感じてしまいます。

幻日のヨハネ 第十話「いってらっしゃいヨハネちゃん!」感想 ~「自分」と「みんな」の狭間で~ - メガネ(裏)


仮定の話ではありますが、「魔法」の力を手に入れたばかりのヨハネだったら、このような精神的打撃を受けることなく「異変」に対して再び立ち向かうことが出来たのかもしれないと思うところもあるのです(あるいは、それは「無謀」や「蛮勇」と呼ばれるものであるのかもしれませんが……)
しかし、彼女はあのときから「成長」してしまった。視えてしまった。そして、知ってしまった。「輝いている」みんなと、それに比べてあまりにも「何もない」自分自身を。

もしかすると、それは「悲劇」と呼ぶべきものなのかもしれません。

「先導者」から、次の「先導者」へ

チカ「そんなことないよ!」

「輝いている」みんなと「何もない」自分。その違いを目の当たりにして無力感に打ちのめされるヨハネを救ったのも、「輝いている」存在でした。
「みんなと違って、私には『何もない』」と嘆くヨハネに対して、チカは言います。夏祭りのステージで歌うヨハネは「輝いていた」のだと。そんな彼女に、チカは憧れを抱いたのだと。
チカの言葉、そして彼女に言葉なき同意を示す仲間たちの姿からは、「ヨハネこそが、この『物語』の『先導者』である」というメッセージを感じるところがあるんですよね。かつてAqours、そして浦の星女学院の「先導者」たる存在であった高海 千歌。彼女と同じ容姿を持った存在であるチカが、ステージ上で歌うヨハネの姿に彼女だけの「輝き」を見出し「先導者」として認める。ひとりきりで暗がりへと踏み出そうとするヨハネの手を取り、光りあふれる場所へと導く構図に、わたしは感慨深さを覚えずにはいられないのです。
そして、「たとえヨハネが『先導者』であったとしても、たったひとりで『異変』に立ち向かわなくてもいいんだ」・「困ったときだって、みんながそばにいるんだよ」というメッセージをはっきりと示しているところにも、ひととひととの「繋がり」を一貫して描き続けてきたこの「物語」らしさを感じるんですよね。

結んだ「縁」と繋いだ「絆」を胸に抱いて、新たな「先導者」は駆け出します。

こぼれ話

わたしもいつか沼津の海産物を味わいに行きたいという気持ち

シマ「今朝水揚げされた新鮮なお魚です!」
チカの母「美味しいわよー!」
ミト「食べて、食べてー!」

このような状況下においても「おしごと」を頑張っている漁業関係者の方々には、尊敬の念を禁じえない。お疲れ様です、いやマジで。
また、「舟盛りが一見豪華に見えるとは言え、旅館の食事にしては品数少なめだな……?」という印象が出てきたところもあるのですが、「ヨハネのために、どうにかして食材をかき集めたんだろうな」という想像にも繋がってくるんですよね。

もっと不可抗力的に発生するものなのかと

また、今回のエピソードで(ほんのわずかな時間であったとは言え)魔法の杖を失くす展開をお出ししてきたということは、今後のストーリーにおいてヨハネが魔法そのものを失う可能性もゼロではなく、むしろその前フリとして今回のエピソードが用意されたかのようにも感じられてくるのです。

幻日のヨハネ 第八話「届け! Sea breeze」感想 ~成長の裏に潜む「弱さ」と「脆さ」~ - メガネ(裏)

まさか、(ヤケクソゆえの行動とは言え)自ら「魔法」を手放すことになるとは思ってもいなかったというところがある。

うおっまぶしっ

チカ「にひひひひ」

(「幻日のヨハネ -Unpolarized Reflexion-」第十七話/原作:矢立 肇、原案:公野 櫻子、作画:まつだ こうた、シナリオ:大野 敏哉、キャラクターデザイン:秋津 たいら より)
https://comic-walker.com/viewer/?tw=2&dlcl=ja&cid=KDCW_AM09202942010017_68

夜中に突然現れた、なんかまぶしいの。
もしかして「Unpolarized Reflexion」の最新話って、これの伏線だったのでは……?

今回のここ好きポイント

チカ「私にひとつ、考えがあるんだけど!」

チカ「私に考えがある!」

ここまでフラグを感じるセリフ、そうそうないでしょ。
一回目に至っては、集中線のせいで余計にそれを感じてしまうところがあるんですよね。

今回のここ好きポイント その2

「サンシャイン!!」や「光景記」・「Unpolarized Reflexion」でのキャラクタ性とは最もかけ離れた印象を見せていたマリですが、今回のエピソードでは「やはり、根本では同じキャラクタなんだな」と感じられる表情が多かったように感じるところがあります。




第十二話までに「異変」が引き起こす騒動を解決し、「『異変』はなぜ発生するのか」・「ライラプスは何者なのか」・「ヨハネの『魔法』の力とは何なのか」といった「謎」に対する解答を提示したうえで、(「サンシャイン!!」二期のように)最終話をまるまるエピローグにあてるのではないだろうかと思っていたところがあったのですが、こうなってくると、どうにもこうにも展開を読み切れないというところはあるんですよね。

それはそれとして、再び立ち上がった「先導者」はいかにして「異変」に立ち向かうのでしょうか。
「幻日のヨハネ」の「物語」も、残り二話。その行く末や、いかに。