ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 二期第九話「The Sky I Can’t Reach」感想 ~届かなくて、まぶしくても~

皆様、こんにちは。
そろそろ梅雨の足音も聞こえているようですが、進捗いかがですか(こちらの地域には梅雨がないので……)


ライブビューイング会場が横浜公演のときから大幅に拡大されているのは喜ばしい限り。昨今は同時生配信の普及によって現地でなくともライブ参加が可能となってはいますが、大きな会場・大きなスクリーンで参加出来るというのは、それとはまた一味違った体験だろうと思うところはあるんですよね。
わたしの行動半径内でもライブビューイングをやってくれるとのことですし、せっかくなので参加してこようかなと思っております。
今回に限らず、今後のライブイベントにおいてもライブビューイングはぜひとも続けていってほしい取り組みではありますが、はてさて。


それでは、本編の詳しい感想をやっていきましょう。
※以下、画像は注記がない限り「TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 二期』第九話」からの引用です。



それは、「呪い」を解くための物語

高名な音楽一家の娘という出自と、それに対する期待に押しつぶされ、歌うことが出来なくなってしまったミア。
「誰かと仲良くなりたい」と願い続けながらもそれに失敗し続け、望まぬ「孤高」を手に入れてしまったランジュ。
今回のエピソードは、そんなふたりが「呪い」から解放されるためにあった物語だったのかなと思うところがあります。

彼女たちは、いかにしてその「呪い」から解き放たれるのでしょうか。

新たな「世界」を、その手に

ミア「歌えないテイラー家の娘に、価値なんてない。だからせめて、自分に出来ることで、この世界に居場所を作ろうとしたんだ」

幼少時より歌うことに楽しさを感じ、歌うことが「大好き」だったミア。もしかすると、世界的な音楽一家・テイラー家の娘という出自が彼女をそうさせたのかもしれません。そんな彼女はあるとき、その家族とともにステージに立つ機会を与えられます。しかし「テイラー家の娘」にかけられた多大な期待はプレッシャーとなって彼女を押しつぶし、ついにミアは歌えなくなってしまうのです。

(「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 二期」第八話より)

このような経緯を考えると、第八話においてミアが侑に対して協力的だったのも納得感が出てくるんですよね。きっと、期待という名のプレッシャーに押しつぶされそうになった侑に自分自身を重ね合わせ、放っておくことが出来なくなったのではないか。わたしには、そう思えてくるのです。


それはそれとして、ステージに立つことになったあの日、ミアは自分が「テイラー家の娘」であることを否応なしに実感してしまった。ミアにとっての「世界」は「テイラー家とそれを取り巻く音楽界」となり、「テイラー家の娘」であることが彼女自身の「アイデンティティ」となってしまった。「テイラー家の娘」でなければ、自分は「世界」に認められなくなってしまうから。
純粋に歌うことが「大好き」だった少女は、ステージで歌うことが出来なかったあの日から、そうやって自分自身に「呪い」をかけてしまったのかもしれません。

璃奈「『ミア・テイラー』じゃなくて『ミアちゃん』の歌が、聴きたいな」

しかし、ミアの「呪い」は、璃奈によって解かれます。ミアの「世界」を、ミアの「アイデンティティ」を、そして、それらが作り出す「ミア・テイラー」自身を「スクールアイドル」で再定義することによって。

「やりたいという気持ち」さえあれば、誰だってスクールアイドルになることが出来る。そして、スクールアイドルであれば、自分の思いや気持ちを思うがままに、そして自由に表現することが出来る。元々、ミアの心には「歌いたい」=「やりたいという気持ち」はあったのです。それならば、あとはほんの少し背中を押してあげるだけ。「一歩を踏み出す勇気」を分けてあげるだけなのです。
ミアを取り巻いていた「世界」を、「スクールアイドル」という自由に満ちあふれた「世界」で再定義することによって、「テイラー家の娘」という「呪い」からミアを解き放つ。それによって、ミアは歌うことが「大好き」なひとりの少女に戻ることが出来る。それは「『テイラー家の娘』であるミア・テイラー」を知らず、それゆえに「『大好き』をその胸に抱くミア・テイラー」と向き合うことが出来て、それだけでなく「一歩を踏み出す勇気」を誰よりもよく知っている璃奈だからこそ出来る行いであると、わたしには感じられるのです。

璃奈が、勇気を振り絞って、クラスメイトである色葉・今日子・浅希と繋がろうとしたから。

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「スクールアイドル」という新たな「世界」を手に入れたミアは、あの日届かなかった憧れに向かって、もう一度手を伸ばします。

新たな「世界」で、もう一度

ランジュ「無理なのよ。アタシは、誰とも一緒にいられないの!」

突如、スクールアイドルをやめて帰国すると宣言したランジュ。彼女のもとに駆けつけたスクールアイドル同好会のメンバとミアを前に、ランジュは涙ながらに語ります。
幼少期より他人の気持ちを上手く推し量れないがために、「誰かと仲良くなりたい」という願いが叶わなかったランジュ。「誰とも一緒にいられない」のなら「ひとりでいる」しかない。「ひとりでもやれる」と「証明」しなければならない。そのような考えは、いつしか彼女の「存在証明」=「アイデンティティ」となり、やがてそれは「呪い」へと変容して、彼女を苦しめることになっていたのかもしれません。

「アタシは『ひとりでもやれる』」と「知らしめ」なければならない。「証明」しなければならない。
そのような事情をランジュが抱えていて、他ならぬ彼女自身がその事情に囚われている。わたしには、そのように思えてならないのです。

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 二期第八話「虹が始まる場所」感想 ~ワクワク叶える物語、どうなるかは僕ら次第~ - メガネ(裏)

もしかしたら、ランジュには何か「証明」しなければならないことがあるのではないだろうか。「ひとりでもやれる」と「証明」しなければならないことが。わたしにはそう思えてくるのです。

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 二期第二話「重なる色」感想 ~声を繋いで、思いを重ねて~ - メガネ(裏)


結局のところ、ランジュが持つ「正しさ」も「孤高」も、彼女自身が望んで手に入れたものではなかったといったところなんですよね(あまり的中してほしいものではなかったなあ……)

しかし、もしランジュが信じる「正しさ」が、彼女自身が望んだものではないとしたら。その「孤高」が、彼女自身が望んだものではないとしたら。

そんなの、悲しすぎる。

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 二期第八話「虹が始まる場所」感想 ~ワクワク叶える物語、どうなるかは僕ら次第~ - メガネ(裏)


それはそれとして、第一回スクールアイドルフェスティバルで観た虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のライブステージにランジュが見出したものは、もしかしたら「トキメキ」ではなくて「救い」だったのかもしれません。ソロアイドルとしてキラキラ輝くことが出来る存在になれば、「ひとりでもやれる」と「証明」出来るのだと。
しかし、ランジュが実際にその目で見たスクールアイドル同好会は、単なるソロアイドルの集まりではなかった。「仲間でライバル」でありながら、「ライバルで仲間」。互いに切磋琢磨し合い、絆を深め合う。それこそが、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会だったのです。

たとえ、それが望んだものでなかったとしても、ランジュは自分自身の「正しさ」を「証明」しなければならなかった。しかし、「正しさ」を「証明」するためにやってきた場所は、彼女が心から求めてやまなかったにもかかわらず、ついに手が届くことがなかった「世界」。そのような「世界」では、彼女は「正しさ」を「証明」することなんて出来ない。だから、「世界」から去るしかない。再び「世界」から拒絶される前に。
ランジュは、そう考えたのかもしれません。


でも、そうではなかった。
ランジュが思っているよりもずっと、その「世界」は優しくて、そして暖かいものだったのです。

エマ「ランジュちゃん、私たちがユニットをはじめようと思ったのは、ランジュちゃんのおかげなんだよ!」

侑「ランジュちゃんの真っ直ぐな言葉があったから、私は前に進めたんだ。ありがとう!」

「与えるだけでいい」。もしかしたら強がりのつもりで言っていたのかもしれないその言葉は、いつの間にか現実のものになっていた。
「仲間でライバル」でありながら「ライバルで仲間」でもある虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。その環の中にいつの間にか自分も加わっていて、自分でも気づかないうちに彼女たちとの絆は紡がれていた。求めていた「世界」は、彼女にも与えられていた。
そのことに気づいたとき、ランジュは「呪い」から解き放たれたのでしょう。

願わくは、「スクールアイドル同好会」という新たな「世界」へと一歩を踏み出すランジュに、幸多からんことを。

こぼれ話

同じ星を、追いかけて

ミア「これからよろしく。ライバルさん」

歌うことが出来ない彼女に代わって彼女の音楽を世界中に知らしめ、ミア自身の存在を証明してくれる格好の人材。言うなれば「ビジネスパートナー」。それが、かつてのミアにとってのランジュだったのでしょう。
しかし、これからのミアにとってランジュはもはや「ビジネスパートナー」ではない。同じ道に並び立って、あるときは競い合い、あるときは助け合う。「仲間でライバル」であり、「ライバルで仲間」なのです。そして、それはランジュにとっても同様なのでしょう。
このような関係性の変化も、彼女たちにとっての新たな「世界」なのかもしれない。わたしには、そう感じられるのです。

キミも大概なのでは……?

ミア「まあ、わかるけどね。ランジュの言い方は癇に障るときがある」

なぜ、このタイミングで追い打ちをかけた。

今日もかすみんが可愛い……?

かすみ「どういうことですかねえ、しお子にも話さないなんて……」

だいきゅうわのかすみんはあまりでばんがなかったけどいたしかたないかなとはおもってます。

今回のエピソードの主軸は、あくまでもランジュとミアであるわけですしね。エピソードの主軸を食わないのも、また可愛さなのです。

今回のここ好きポイント

璃奈「ダメ!」
かすみ「行かせませんよ!」
しずく「ミアさんの曲、聴いて下さい!」

一年生トリオの、なりふり構わぬ必死さが感じられて好き。これが、若さか。





ついにランジュとミアが加わり、「十二人とひとりの少女」となった虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
彼女たちが紡ぐ物語の終わりも少しずつ見えてくるなか、その「終わり方」について気になってしまうところはあるんですよね。「アニメニジガク」一期における第一回スクールアイドルフェスティバルのようなゴールが用意されているのか、はたまた……、

かすみ・ランジュ「次回、『かすみん☆ワンダーツアー』」

新規私服、来たぁッ!