ラブライブ!スーパースター!! 二期第十二話「私を叶える物語」感想 ~だって、旅はまだはじまったばかりさ~

皆様、こんにちは。
日を追うごとに、青く澄んだ秋空がその高さを増していく今日この頃ですが、進捗いかがですか。


ラブライブ!スーパースター!!」二期のストーリーが、ついにクライマックスを迎えます。新たな仲間を迎えて、九人となったLiella!。「みんなのために歌いたい」・「音楽でみんなを結びたい」・「応援してくれるみんなで勝利する喜びを分かち合いたい」という想いを胸に、「ラブライブ!」優勝を目指して駆け抜けてきた彼女たちの「物語」はいかなる結末へとたどり着き、そして叶えられていくのでしょうか。

さあ、Liella!が全力で叶える「物語」を、最後の瞬間まで見届けようではありませんか。「準備はいいかな いますぐ Start up!」。


それでは、本編の詳しい感想をやっていきましょう。
※以下、画像はすべて「TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!! 二期』第十二話」からの引用です。



「先導者」が叶える物語

澁谷かのんは、「先導者」である。

澁谷かのんがスクールアイドルと、そして「ラブライブ!」と出会ったことによって、彼女の「物語」は動きだした。その出会いが「敗北」に囚われかけた澁谷かのんの心に再び灯をともし、その瞬間から「スーパースター!!」の「物語」は動きはじめた。
そして、澁谷かのんもまた、誰かの「物語」を動かしてきた。澁谷かのんと出会ったことで、嵐 千砂都の、唐 可可の、平安名すみれの、葉月 恋の、桜小路きな子の、米女メイの、若菜 四季の、鬼塚 夏美の「物語」は、大きく動きはじめた。嵐 千砂都が澁谷かのんに対して語ったように、澁谷かのんはLiella!にとって、結ヶ丘にとって、そして「スーパースター!!」の「物語」にとってのスーパースターである。それと同時に、澁谷かのんは「先導者」でもあるのだ。

しかし、澁谷かのんが「先導者」であることは、彼女が完全無欠な存在であることを意味しない。
世界最高峰と名高いウィーン国立音楽学校への留学。世界を舞台とした大きな挑戦を目前にして、澁谷かのんは躊躇いを覚える。「敗北」の過去を乗り越え、再び「大好き」を手に入れるきっかけをくれた仲間たちとの別れを目前にして、澁谷かのんは迷いを見せる。「みんなのために歌いたい」・「音楽でみんなを結びたい」・「みんなで喜びを分かち合いたい」という新たな夢を掴むきっかけをくれた学舎との別れを目前にして、澁谷かのんは怖れを抱く。
澁谷かのんは「先導者」である前に、十七歳の女子高生なのである。そのようなネガティブな感情を見せたとしても、なんの不思議もないだろう。


しかし、他ならぬLiella!の仲間たちが、澁谷かのんの背中を押すのである。
澁谷かのんを「先導者」として、スクールアイドルとしての道程を歩んできたLiella!。その「先導者」としての役割は、澁谷かのんにこそふさわしいのかもしれない。しかし、他の仲間たちが澁谷かのんの代わりに「先導者」になることが出来ないとしても、澁谷かのんの隣に立って同じ道程を共に見据えて一緒に歩むことや、澁谷かのんの背中に立ってその後押しをすることは出来るのだ。むしろ、澁谷かのんにとってLiella!の仲間たちがそのような存在であったからこそ、彼女は「先導者」であり続けることが出来たのだろう。仲間たちから受け取った想いが、願いが、期待が、夢が、希望が、澁谷かのんが「物語」を叶えるための原動力となる。それはもはや、背負わなければならない責任や重圧などではないのだ。


そして、結ヶ丘の存在もまた、澁谷かのんの背中を押す。
「結ヶ丘に入学していなければ、歌をやめていたと思う」と、澁谷かのんは語った。「敗北」の過去を乗り越え、新たな夢を与えてくれたかけがえのない場所。そのような場所である結ヶ丘から離れ、大切な拠り所を失ってしまうことが「怖いんだ」とも。もしかすると、澁谷かのんはその「怖れ」によって、知らず知らずのうちに彼女自身を結ヶ丘に縛り付けていたのかもしれない。
気づきはウィーン・マルガレーテからもたらされた。ウィーン国立音楽学校は、世界に名を馳せる音楽学校である。澁谷かのんがそこに留学すれば、彼女の母校である結ヶ丘もきっと注目される、と。この気づきによって、結ヶ丘は澁谷かのんを縛る枷ではなく、澁谷かのんの背中を後押しする存在へと変わる。澁谷かのんが「物語」を叶えるための、もうひとつの原動力となったのだ。


「みんなのために歌いたい」・「音楽でみんなを結びたい」・「みんなで喜びを分かち合いたい」。澁谷かのんはいつだって「みんな」のためを想い、「みんな」のために行動を起こし、「みんな」のために歌ってきた。
そんな彼女と同じように、「みんな」もまた、いつだって澁谷かのんのことを想い、そして背中を押してくれるのだ。
澁谷かのんは「ひとり」ではない。いつだって、「みんな」とともにある。

Liella!の仲間たちは、澁谷かのんに向けて言った。「かのんの夢は、みんなの夢」であると。澁谷かのんの「『私』を叶える物語」は、もはや「『私だけ』で叶える物語」ではない。
その「物語」は、きっと「『みんな』で叶える物語」でもあるのだろう。

こぼれ話

なぜそこでアクセルを踏んでしまったのか

かのん「マルガレーテちゃん? え、ええっ? なんで?!」
ウィーン「見ての通りよ。留学は中止」

かのん「ど……、どうなっちゃうのー!?

ちょっと視聴者を信頼しすぎだと思う。そこはかとなく、「もちろん『スーパースター!!』三期があるから、この続きはきっちりやるよ! みんなもわかってるよね?!」というメッセージめいたものを感じるんですよ。そりゃあ、三期(あるいは、劇場版)はあると思っていたし、実際に放送直後の「Liella!生放送」で三期制作決定が発表されましたけどね……?
「留学中止」の下りについては「スーパースター!!」三期まで持ち越したほうが、ストーリーのシメとしてはキレイだったんじゃないだろうかという気持ちが出てくるところもありますが、それはそれ、これはこれ。

それはあくまで「物語」の過程

かのん「これが……、私たちの『ラブライブ!』!」

最終回直前で「かのんの留学」というどデカいトピックを持ってきた「スーパースター!!」二期。このストーリー展開について、「はたして『ラブライブ!』全国大会なんてやっている余裕はあるのか……? あるいは『スーパースター!!』三期冒頭で参加賞の三色ボールペンをもらった話をして終わりにするつもりなのでは……?」と内心でヒヤヒヤしていたのですが、その優勝までの軌跡をきっちり描いてくれて、素直に感心したところがあるんですよね。「『ラブライブ!』に優勝して、かのん留学に弾みをつけよう」というストーリー展開についても、ベタながらベターといった趣(おもむき)を感じられます。
「『ラブライブ!』優勝」という結果を、比較的あっさりした調子でお出ししてきたことについても、「『ラブライブ!』優勝は確かに重要なことだけど、本当に重要なのはかのんたちが『ラブライブ!』優勝を目指し、そこに至るまでの過程において何を得ていったのかということである」という、これまでの「ラブライブ!」シリーズにも通じる主題性を感じられる部分もあって、そこまで悪いものでもないなと、わたしには思えてくるんですよね。

ウィーン「それなら、留学しても恩返しは出来る。むしろ、留学したほうがあなたの学校の力になれるわ」

「『ラブライブ!』優勝は確かに重要なことだけど……」という観点から言うと、ウィーンからかのんへもたらされた「留学することで結ヶ丘に貢献することが出来る」という気づき。これは別の側面から言えば「スクールアイドルでなくても学校に貢献することが出来る」ということであり、「ラブライブ!」でお出しする答えとしてはずいぶん大胆なものだなという気持ちがあるんですよね。しかしながら、それと同時に「『ラブライブ!』優勝よりも、それに至るまでの過程こそが重要」という主題性と同じマインドを感じるところもあるのです。

今回のここ好きポイント

四季「みんな……、頑張った……」
千砂都「あれー? もしかして四季ちゃんも?」
四季「違う、これは汗」

四季がここまでベタな言い訳をするとは思わなかった。

今回のここ好きポイント その2

かのん「……へ?」

「留学中止」をお出しするところまで一気に持っていく展開に多少なりとも思うところがないわけではないが、かのんに過去最大クラスの間抜けボイスを引き出させたことについては、ある意味で怪我の功名と言えなくもないかもしれない。





ついに最終回を迎えた「スーパースター!!」二期。
かのんは「『みんな』であること」にこだわり続け、「みんな」のことを想い、「みんな」のためにスクールアイドルとして歌ってきました。そんな彼女の「先導者」としての存在感は、ストーリーを通じて存分に発揮されていたのではないかと、わたしには思えるのです。そして、かのんを中心として「みんなで叶える物語」を全面に押し出しながらも、最終的には「私を叶える物語」への目配せも忘れない。そんなストーリー展開についても、「ラブライブ!スーパースター!!」らしさを感じられたというところがあるんですよね。
そして、かのんの、Liella!の、「スーパースター!!」のストーリーがこれからも続いていくというところについても安心感にも似た気持ちが生まれてくるのです。「ラブライブ!」優勝という大きな目標を達成したLiella!が、いかにしてさらなる躍進を遂げていくのか。期待とともに、スクールアイドルとしてこれからも駆け抜ける彼女たちを見守っていくことにしましょうか。


最後に、「この瞬間目一杯に 夢見て精一杯」を存分に味わうことが出来て、なおかつ「いま以上 これ以上 夢が高鳴る」ような「物語」を届けて下さったスタッフ・キャストの皆様に感謝を申し上げます。ありがとうございました。